Category: 小説
2011年10月7日(金) ≪『名探偵なんか怖くない』≫
今日は「ミステリー記念日」だそうだ。1849年10月7日に推理(ミステリー)小説の先駆者といわれるエドガー・アラン・ポーが亡くなったことに由来するらしい。1845年に発表された『モルグ街の殺人』が、世界初の本格的な推理小説と言われているので我が国でそう決めたらしい。推理小説は、殺人・盗難・誘拐・詐欺など、なんらかの事件・犯罪の発生と、その合理的な解決へ向けての経過を描くものだ。「探偵小説」と呼ばれた時代もあったが、「偵」の文字が当用漢字になかった用いられなくなった。
但し、「偵」の字が当用漢字として復活してからは、名探偵が登場するものを推理小説の1ジャンルとして響きがなつかしい「探偵小説」という呼び名で呼ぶ事も有るようだ。小説に登場する有名な探偵としては、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ、アガサ・クリスティのエルキュール・ポアロ、エラリー・クイーンのエラリー・クイーン、我が国では江戸川乱歩の明智小五郎、横溝正史の金田一耕助などが挙げられよう。ここで私が以前読んだ事のある東西の名探偵が参集する趣向のパロディミステリーシリーズをご紹介してみよう。
題名が≪『名探偵なんか怖くない』≫といい西村京太郎著の「名探偵シリーズ」4部作の第1作で、何と明智小五郎、エルキュール・ポワロ、エラリー・クイーン、そしてジョルジュ・シムノンのメグレ警視の4人が探偵役として共演するものだ。下の本がそうだが、あらすじはこうだ。
『日本の老富豪・佐藤大造は、米国のエラリー・クイーン、英国のポワロ、フランスのメグレ、そして明智小五郎を自費で呼び集める。世界に名だたる名探偵である彼らに、一つの挑戦j状をつきつけた。それはあの三億円事件を実際に再現し、模倣犯の行動の軌跡を追うことで、本当の三億円事件の実態にも迫ってもらおうというものだった。4人の名探偵はこれを承諾する。佐藤の秘書役の青年・三島の前で、佐藤のもう一人の子飼いの青年・神崎が、この途方もない計画を進行する。やがて村越という若者が三島や名探偵たちの前に出現。村越は佐藤がお膳立てした計画のまま、佐藤が用意した三億円を奪う。だがそのうちに、計画にはないはずの殺人事件が発生して・・・・・。』
何とも奇想天外なストーリーだが、不思議なことに大分前に読んだせいか?この結末を思いだせない。昨日このブログを書こうと思ってその本を探してみたが、残念ながら見当たらなかった。どなたか結末をご存じの方は、是非ご一報賜りたい!
2011年8月22日(月) ≪「藤村忌」≫
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
これは、島崎藤村の処女詩集「若菜集」に収録された51編の中で最も有名な「初恋」の一節である。我が国における代表的なロマン主義時人であり、後に自然主義小説家として名を成した藤村が1943年(昭和18年)の今日、71歳で亡くなっている。日本ペンクラブの初代会長でもある藤村の作品には『破戒』や『春』、姪との近親姦を告白した『新生』、父をモデルとした歴史小説の大作『夜明け前』など話題作が多い。
特に被差別部落出身の小学校教師がその出生に苦しみ、ついに告白するまでを描いた『破戒』は、同和問題に鋭く切り込んだ秀作である。タブーに果敢に挑戦したこの作品を夏目漱石は、「明治の小説としては後世に伝ふべき名篇也」と評価している。藤村の作品は、狂死した父親の「親譲りの憂鬱」を深刻に表現したものが多い。小説家や芸術家は「変人・奇人」が多いと言われるが、藤村もその類のようだ。一方、今も歌い継がれている『椰子の実』や『千曲川旅情の歌』(いずれも「落梅集」に収録)など心優しい作品も多い。
私も約10年近く前に長野県小諸市にある『藤村記念館』(写真の銅像)を訪れてから、藤村の作品を何冊か手に取った。彼の作品を読むたびに、不世出の詩人・小説家との思いが増してくるのだ。
2011年7月28日(木) ≪江戸川乱歩と明智小五郎≫
私が、子供の頃のヒーローの1人に明智小五郎という人物が居た。言わずと知れた推理小説家の泰斗、江戸川乱歩が生み出した名探偵である。明智は当初、タバコ屋の二階に間借りしている定職を持たない高等遊民であった。服装には無頓着で木綿の着物によれよれの兵児帯(へこおび)、髪はモジャモジャという書生スタイルで描かれ、後に横溝正史作の探偵金田一耕助にスタイルを踏襲させたと言われている。明智はその後、活動拠点も千代田区采女町の開化アパート2階に変わり、ここで「明智小五郎探偵事務所」を構えている。
助手の小林芳雄を団長とする「少年探偵団」や、警視庁捜査一課の中村善四郎警部の助けを借り、数々の難事件を解決する。妻は文代(ふみよ)で、彼女も探偵としての資質は高く、その辺りの人的構成や物語の展開が娯楽が少なかった頃の私たち子供達の興味を惹いたのであろう。明智小五郎の命名には諸説あるが、戦国武将の明智光秀とその変名とされる「荒深小五郎」から取ったとされる説の他、明智と幕末の志士「桂小五郎」の小五郎を足したとする説がある。
今日のブログの話題を乱歩と明智にしたには訳が有る。1965年(S40年)の今日7月28日に江戸川乱歩が亡くなっているのだ。彼は、三重県名張市に生まれ早稲田大学政経学部卒業。中学生のころに黒岩涙香(るいこう)の『幽霊塔』などの作品に熱中して以来、欧米のミステリーを耽読。大学卒業後は貿易商社、造船所事務員、古本商、東京市役所吏員、屋台のソバ屋など各種の職業を転々とする。ペンネームは彼が傾倒したエドガー・アラン・ポーに由来するという。
1954年還暦を記念して新人発掘を意図した江戸川乱歩賞を設定、陳舜臣、戸川昌子、西村京太郎、齊藤栄、森村誠一などそうそうたる連中が受賞している。そして1963年には、日本推理作家協会の初代理事長に就任するなど、その足跡は大きい。
![]()
<乱歩の代表的な作品「怪人二十面相」>
皆さんは、「本屋大賞」という賞が有るのをご存じだろうか?小説の賞としては、芥川賞や直木賞、或いは有名小説家の名前を冠した賞が有名である。一般公募でも純文学系では、文學界新人賞、すばる文学賞、文藝賞、大衆文学系では、オール讀物新人賞、 小説すばる新人賞 、 野性時代青春文学大賞 、メフィスト賞 、新潮エンターテイメント大賞など数多あるが、この賞は選考資格者が「新刊を扱う書店の書店員のみ」という点が他の文学賞と大きく異なる。2004年に設立されたもので、本屋大賞実行委員会が運営する。
2004年の第一位が「博士の愛した数式」(小川洋子/新潮社)、2005年が「夜のピクニック」(恩田陸/新潮社)、2006年が「東京タワー~オカンとボクと、時々オトン」(リリー・フランキー/扶桑社)、2007年が「一瞬風になれ」(佐藤多佳/講談社)、2008年が「ゴールデンスランバー」(伊坂幸太郎/新潮社)、2009年が「告白」(湊かなえ/双葉社)、2010年が「天地明察」(沖方丁/角川書店)等、殆どが映画化されたりテレビドラマ化された話題作なので、読まれた方も多いだろう。そして今年の受賞作第一が、「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉/小学館)という作品だ。
東川篤哉(ひがしかわ・とくや)氏(43)が、8回目の投稿で栄冠を獲得したもので、受賞作は、「宝生グループ」という財閥グループの令嬢でもある東京・国立署の苦労知らずのお嬢様刑事、宝生麗子と彼女に仕える執事が難事件に挑む短編ミステリー集。この影山という執事が一風変わっていて、『この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか』とやたらと毒舌をかまして、あっさり真犯人を言い当てる辺りが人気の秘密らしい。設定がユニークで、ドラマ化されるのは間違いないと思うが、主演に誰が(上戸彩?)選ばれるか興味津津だ。たまたま事務所の女性が読んでいるそうで、彼女が終わったら借りて読んでみる事にしよう。
<2011年の「本屋大賞」を受賞した東川篤哉(ひがしかわ・とくや)氏だが、聞くところによると彼は未だにアパートの1人暮らしで携帯電話も持っていないらしい。小説家の顔は余り知らない方がいいのかもしれない!>
2011年4月28日(木) ≪小説に見る「邪馬台国」≫
今朝の日経新聞によると、「邪馬台国」があったと思われる奈良県で新たに違う大きな館跡が発見されたと出ていた。邪馬台国で、イメージするのは女王卑弥呼であるが、その位置に付いては奈良周辺という畿内説と九州説の二大説が対立している。邪馬台国は3世紀に日本列島に存在したとされる国(くに)のひとつである。因みに、ここで使われている国とは、この時代の中国漢文でいう国(=塀、柵、堀などで囲われた砦の町)のことである。『三国志』における「魏志倭人伝」では、親魏倭王(しんぎわおう)卑弥呼はこの国の女王であり、約30の国からなる倭国の都としてここに住居していたと記されている。
私が初めて邪馬台国に興味を持ったのは、小学校高学年か中学校低学年の時に読んだ高木彬光の「邪馬台国の秘密」(角川文庫)である。入院加療中の名探偵神津恭介は病床のつれづれに、友人の推理作家松下研三と共に、この歴史最大の謎に挑戦した。しかも二人は、古代日本の地理、気象状況に忠実に従い、少しの詭弁、妥協も許さないという厳しいルールを課し、先人の誰もが辿りつけなかった「真の邪馬台国」を見つけようと試みる。そして、決定的な論拠を示しながら幻の国邪馬台国の有り場所に迫るという一大野心作だ。
その他にも、『卑弥呼の骨が出土した』というショッキングな書き出しで始まる阿井渉介著の「卑弥呼殺人事件」、長編歴史推理小説の邦光史郎著の「七つの邪馬台国」、邪馬台国が阿波に会ったという設定の志茂田景樹著の「邪馬台国の神符」、邪馬台国のロマンと古代史の推理が見事に結びあった松本清張著の「陸行水行」、邪馬台国があった場所を生涯探し続けた宮崎康平と、盲目の彼を支え続けた妻・和子の物語を綴った宮崎康平による「まぼろしの邪馬台国」などがある。
殆どが、「邪馬台国」のミステリーに絡んだ推理小説だが、謎が多いテーマを選んだだけに想像力が逞しくなり、全てが時間の経つのも忘れて楽しい一時が過ごせる秀逸な本である。
<邪馬台国の想像図>


